住宅ローンの返済が難しくなった時にやるべきこと
2021.08.06
大変残念なことですが、昨今のコロナ禍に伴う経済活動へのダメージにより、職を失ったり、収入が大きく減少して困窮している方がたくさんいらっしゃるというニュースをしばしば耳にします。
また、コロナ問題が原因ではなくても、勤務先の会社が倒産したり、病気やケガで働けなくなってしまったり、身内の介護が深刻化したりして、住宅ローンの返済が難しくなってしまうことがあります。
現代社会においては、突然このような事態に陥るリスクは誰にでもあると言え、大企業に勤めていても100%安泰とは言えないかもしれません。
今まさにローンの返済困難に直面している方はもちろん、万一の際に備えたいという方にも、このコラムを参照していただければ幸いです。
◆◆住宅ローンの返済は社会保障の対象外◆◆
住宅ローンを組んで分譲マンションや一戸建て住宅を購入した方の多くは、35年間などの長期に渡る返済期間を選択していると思います。
返済期間が長いと毎月の返済額が少なくできるのでメリットがあるように感じますが、逆に言えば、その間ずっと返済を怠ってはならず、未返済の残債もなかなか減らない状況が続くことになります。
また、返済期間が長いということは、その途中で就労状況や健康状態に大きな変化が起きる可能性が高いとも言えます。
経済的に困った際に思い浮かぶのは、社会保障の制度であるセーフティネット(生活保護等)の利用ですが、貴方が賃貸住宅にお住まいなら家賃扶助等の対象になる可能性があるものの、ご自宅という不動産を持っている場合のローン返済のための支援は受けられません。
一方、個人で契約している保険や住宅ローンと同時に申し込んだ団体信用保険(団信)は、特約がない限り、基本的には生命保険です。
ご本人の死亡や特定の病気で入院した時には保険金が給付されますが、失業による減収などは保険の対象ではありません。
◆◆金融機関のスタンス◆◆
社会保障や保険で住宅ローンの返済を賄うことが難しい中で、貯金も底をついてしまう状況になると、滞納が始まってしまいます。
金融機関サイドは貴方の現状を把握している訳ではありませんので、当然ですが、滞納すれば支払督促が送られてきます。
このような場合、多くの方が取る行動が、滞納という都合の悪い事実の隠蔽や無視です。
ご自身のプライドが許さない、家族に知られて心配を掛けたくない、そもそも払うお金がないのにどうしろと言うのだ?というお気持ちは痛いほどよく分かります。
一方で、貸している立場の金融機関から見ればどうでしょうか?
数千万円という貸付金がもし回収できなくなれば大きな損失を被ることになるので、貴方と連絡を取って、今後どのように返済していくかについてすぐにでも話したいはずです。
住宅ローンを取扱っている金融機関は、滞納したからと言って暴力的に取り立てるような企業ではなく、貴方の状況や返済の見通しを理解したうえで対応策を相談したいと思っています。
ただ、貴方が滞納という状況に真摯に向き合わず、隠蔽や無視する状況を続けてしまうと、いずれはやむを得ず、法的に認められる強硬な回収手段に訴えてきます。
◆◆滞納の放置は最悪の選択◆◆
滞納した際の最悪の対応は、このように貴方が隠蔽や無視という態度を取ること、つまり結果的に何も対応せず放置してしまうことによって、金融機関とのコミュニケーションを遮断してしまうことです。
もちろん大多数の方は、単に無視している訳ではなく、心の中ではなんとかしようと思ってるはずですが、近い将来に収入が回復して滞納を解消できることが確実に決まっていない限り、「なんとかなる」という楽観的な見込みで乗り切るのは非現実的でしょう。
滞納額が嵩んでいき、何度督促しても支払いや協議に応じてもらえなければ、最終的に金融機関は「抵当権」を実行します。
抵当権の実行とは、ローンの対象不動産を一方的に売却(競売)して所有権を奪ってしまう、法的に認められている回収手段(強制執行)です。
競売が成立した場合は、貴方は所有者ではなくなるので問答無用で立ち退きを求められ、転居先や引越し代なども一切配慮されません。
夜逃げ同然で退去せざるを得ないケースも多く、その後の生活の再建も著しく難しくなってしまいます。
◆◆抵当権の実行を回避するために◆◆
抵当権の実行による競売は、貴方に救いようのない最悪の状況をもたらしますが、金融機関(債権者)にとっても、好んで使いたい回収手段という訳ではありません。
では、これを避けるにはどうしたらいいのでしょうか?
まず最初にやるべきことは、金融機関に対して率直に滞納している事情を説明し、相談することです。
もし貴方に減収になったとはいえ継続的な収入が見込めるなら、返済期間や適用金利を見直して毎月の返済額を少なくするなど、親身になって提案や対応をしてくれます。
また、もう1つ同時にやるべきことは、所有しているマンション等を仮に売却した場合、売却額と住宅ローンの残債額を比べて、どちらが多いのか、また差額はどの位なのかを把握すること。
売却額の方が高そうなら、住居を売却することでローンを一括返済し、賃貸住宅などに転居することを計画的に進めることが可能です。
逆にローンの残債の方が多い場合は、売却した後も一部のローンが残ってしまうため、十分に検討したうえで方針を決めることが重要になります。
◆◆任意売却という解決手段◆◆
住宅ローンの返済が困難となり、かつマンション等の自宅不動産を売却しても残債の全額を返せない見通しの場合の対応手段に「任意売却」という仕組みがあります。
これは、銀行等と交渉して返済できそうにない金額を残債から免除(債権放棄)してもらう約束を事前に取り付けたうえで、対象不動産を売却するというものです。
転居先を用意する費用や生活再建に必要な資金にも一定の配慮をしてもらえますし、通常の売却の場合と同じように、穏やかに手続きを進めることができます。
また、当事者である金融機関や一部の関係者を別にして、ご近所や知人などの第三者に住宅ローンの滞納が原因で売却されたことを知られる心配もありません。
ただ、この仕組みを使うと、金融機関には債権放棄に伴う一定額の損失が発生することになります。
実は、抵当権の実行という手段を取っても債権の全額を回収できないケースが多いのですが、だからと言って軽い気持ちでお願いして了解を得られる訳もなく、売却に関わる計画や見通しを誠意をもって説明のうえ、理解してもらうことが大前提です。
任意売却を使っても自宅を失うという点では苦しい選択であることは変わりありませんが、抵当権の実行という強硬な回収手段を取られる場合に較べれば、大きなメリットがあると言えるでしょう。
もし任意売却を考えるなら、秘密厳守で信頼できそうな最寄りの不動産会社に相談してみることをお勧めします。