分譲マンションを保有しているとどんなコストがかかる?
2021.09.04
分譲マンションを購入する時、売買価格などの取得費用に目が行きがちですが、実際に生活していくうえで重要なのは、購入後に半永久的に掛かってくるランニングコストの方です。
背伸びした物件を購入すると、毎月の住宅ローンの返済額でしんどいのはもちろん、マンション暮らしをする以上避けられない各種費用の負担も嵩み、余裕のない生活に陥ってしまいかねません。
現在分譲マンションにお住まいの方にとっては今更かもしれませんが、初めてマンションの購入を検討する方は十分ご注意ください。
このコラムでは、マンションの保有に伴って生じるコストの内容と留意点をお話します。
◆◆管理費◆◆
マンションでの生活は一戸建て住宅に較べて楽だと感じる方が大変多いですが、その大きな理由は、自分の部屋の中以外の建物・設備や敷地全体の管理・清掃を管理会社がすべてやってくれることにあります。
古いマンションでは「管理組合」という所有者全員で構成される組織が直接管理していることもなくはないですが、大多数のマンションでは〇〇コミュニティなどの管理会社に有償で管理業務を委託しています。
このような委託費用や共用部分で使う電気代などを賄うために、すべての所有者から管理費を毎月徴収する必要があります。
管理費の負担は、その住戸に住んでいない場合などでも個別事情は配慮されず、負担を逃れることはできません。
通常、管理費は全体で必要な1年間当りの総額に基づいて、お部屋の広さ(専有面積)に比例して各住戸の金額を設定します。
同じマンションの中なら広い住戸の方が管理費は高額になりますが、逆に同じ広さなら、所在階や方位が異なっても同額です。
また、1戸当りの負担額は、それぞれのマンションの管理業務の内容(清掃の頻度など)や管理対象箇所のボリューム(共用施設や植栽など)によっても異なります。
昨今ではゴミをいつでも出せたり、有人のコンシェルジュデスクがあったりするほか、エントランスホールや内廊下に常時エアコンが効いている快適なマンションが多々見られますが、このような快適さや便利さも、管理費によって実現されています。
◆◆修繕積立金◆◆
建物・設備は経年に伴う劣化が避けられず、継続的に資産として維持するには、適切な補修工事や更新が欠かせません。
一戸建て住宅なら修繕の実施は所有者の任意なので、予防的な工事は懐に余裕がある時に実施するのが現実的ですが、マンションでは各住戸の所有者ごとに意見や経済事情が異なるため、いずれ必要になる大規模な修繕工事に備えて貯金を作る制度が運用されています。
これを修繕積立金といい、上記の管理費とともに、全住戸の所有者から毎月一定額が徴収されます。
修繕積立金は、修繕計画を作成して工事金の総額を見積り、お部屋の広さ(専有面積)に比例して各住戸に按分するので、各人の個別の事情や主張で支払いを拒否することはできません。
修繕積立金で特に留意しなければならないのは、建築から時間が経過するほど修繕工事の対象箇所や工事内容が増していくため、必要となる工事金も高額化してしまい、それを賄うために毎月の積立額を値上げ改定することが非常に多いことです。
築年数の浅いマンションを購入する場合は、修繕積立金がいずれ値上げされると見込んでおくべきでしょう。
なお、もしマンションを売却した場合でも、それまでに拠出した修繕積立金の返還を請求することはできません。
◆◆駐車場や専用使用部分◆◆
マイカーをお持ちの世帯にとっては、ほとんどのマンションでは駐車場の利用は有料であることをご認識ください。
周辺の月極駐車場の料金に較べるとやや安いことが多いですが、感覚的には敷地内で月極駐車場を借りているのと同じようなものです。
一部のマンションでは無料だったり、各住戸に利用権があらかじめ割り当てられているケースもありますが、駐車場も管理に費用が掛かるため、ゆくゆく問題になることがない訳ではありません。
特に、平面で置ける自走式の駐車場なら管理コストは低額ですが、パレットが上下左右に動く機械式やタワーパーキングの場合、定期的な点検や部品交換、将来的には装置自体の更新も必要になり、多額の費用が必要になることも想定されます。
また、お部屋の位置が角部屋や最上階でルーフバルコニーが付いていたり、1階で庭が付いている場合は、専用使用料という名称の負担金が徴収されます。
ルーフバルコニー(=屋根)や庭(=敷地)はマンションとしては本来は共用部分の扱いなので、そこを特定の住戸が独占するのだから不公平にならないように利用料を負担してもらう、という理由です。
なお、通常のバルコニー(ベランダ)なども区分上は共用部分ですが、多くのマンションでは全住戸に設置されており不公平感はないため、利用料を徴収する対象にしていません。
◆◆固定資産税・都市計画税◆◆
マンションに限らず、不動産(土地・建物)を保有していると、所在地の自治体(例えば横浜市)から必ず課税される税金です。
所得税や相続税などは申告をしたうえで納税しますが、固定資産税・都市計画税は自治体によって不動産の所有者などの情報が把握され、自動的に自宅に課税通知書と納付書が送られてきます。
課税の対象は、毎年1月1日時点で不動産を持っている方となるので、通常では売買した時には新旧の所有者間で当年分を期間按分して精算し、購入した方に対しては、売買の翌年の4月頃に初回の課税通知が送付されます。
この税金には、税額を計算する原則的なルールとは別に、多数の軽減措置等の制度があり複雑なので、このコラムでは詳細は割愛します。
1点だけ留意点を申し上げれば、例えば2021年時点で、マンションの場合は新築から5年間は建物の固定資産税を1/2に減額する制度が運用されています。
それ自体は負担が減って歓迎すべきことですが、もし築浅のマンションを購入して、売買時に聞いた安い税額だけをインプットしてしまうと、ある年から突然跳ね上がる(本来の税額に戻る)ことになるので、制度を理解しておいてください。