マンション売却の際に「原状回復」は必要?
2021.11.21
普通に生活している圧倒的多数の方にとって、不動産やマンションの売買、特に売却をする機会は、人生において滅多に訪れるものではありません。
従って、売却という行為に直面した時には分からないことばかりなのが当然なので、臆せずに何でも不動産会社に聞きましょう。
例えばこのコラムのタイトルである「原状回復」の対応を、お客さまから聞かれることがあります。
なぜこのような質問が出るかというと、売買よりもはるかに身近な賃貸住宅を借りた経験なら、多くの方が持っているからでしょう。
賃貸住宅から退去して引渡す時には、不動産屋がやってきて、原状回復義務があることを説明をします。
この考え方は、売買時の引渡しにおいても、同様に適用されるのでしょうか?
◆◆原状回復義務とは何か?◆◆
ここで、そもそも原状回復の意味について考えてみましょう。
言葉としては、室内を原状(現状ではないのがポイント)に戻すことに他なりませんが、原状とは、そのお部屋を借りた時の状態を指します。
賃貸住宅に入居していた期間に、傷や著しい汚れを付けてしまったり、設備を壊したり備品を紛失したような場合は、経年劣化による自然損耗を除いて、借主が費用を負担してこれらを修復し、元の状態に戻さなければなりません。
賃貸住宅の退去に伴う引渡しとは、貸主である所有者に部屋を返す行為なので、返し方は賃貸借契約書に定められています。
もちろん、借主にすべてをピカピカにするよう求めている訳ではありませんが、責任がある範囲で修復費を負担していただくことになります。
※かつては原状回復義務にかこつけて内装を刷新することがまかり通っていましたが、現代では法規制されています。
◆◆売買では「原状」の認識がない◆◆
一方で、もし売買の引渡しの際に原状回復という言葉を使うとすれば、原状とは何を指すのか?が大きな問題になります。
新築時の状態でしょうか?
まさかそんなことを言い出したら、築20年や30年の家は、事実上売ることができなくなりますね。
従って、売買においては、売主様の原状回復という考え方は適用しません。
売却の際の引渡し時の状態は、原状回復とはある意味で真逆の考え方で、「現状有姿」といい、その時のあるがままの状態で構わないということになります。
売主様としては、引渡しを約束した日までに引越しや家財・荷物の搬出をして完全に空の状態にさえしておけば、それ以上の責任を問われることはありません。
設備の故障や不具合箇所がある場合には、その旨を契約時に書面で買主に申し送りしておくことで、修理などの責任を追及されずに済みます。
◆◆契約上の責任と「売りやすさ」は別問題◆◆
ですから、売却時に売主様に大きな費用負担が生じることは、原則としてありません。
退去した後にまったく掃除をしていなくても、売買契約上の義務としては、それを咎められることもありません。
ただ経年劣化を別にして、もし室内の汚れや損傷が酷く清潔感のない状態を放置した部屋だとすると、購入を検討するお客様の目線から新居として魅力的に見えるかどうかは、まったく別の話です。
余談ではありますが、購入するお客さまからも、この部屋は原状回復するのですか?と逆に質問を受けることがあります。
原状回復義務という概念はありませんが、購入するお客様にアピールして気持ちよく買っていただくため、そして結果として高く売るためには、売主様サイドが何もしなくてよいということにはなりません。
売却する際にはいくつかの大切なポイントがあるので、これらをしっかり押さえて、スムーズで高額での売買をぜひ実現してください!