不動産仲介の闇① 物件の囲い込みとは?
2021.11.30
不動産会社に対する貴方のイメージはどのようなものでしょうか?
「怪しい」「怖い」「えげつない」・・・
残念ながら、マイナスのイメージを持っていらっしゃる方が多いと思います。
弊社としては、プロとしてお客様ファーストの経営を追求し、ご信頼いただけることを最優先に置いていますが、お客様から表立ってクレームを受けないように「工夫」して、会社の利益を優先してしまう不動産店も少なくありません。
違法とまでは言えないけれど、お客様、特に売主様から見ると不利益を被ってしまう、不動産仲介業の闇を見ていきましょう。
今回のコラムのテーマは「物件の囲い込み」です。
◆◆不動産仲介の本来の姿とは◆◆
不動産仲介の大原則は、売りたい方と買いたい方(賃貸なら貸したい方と借りたい方)をできるだけ幅広くマッチングさせて、双方に多くの機会をお示ししながら、一番いい組合せで早期に成約することです。
このためには、売却物件の情報を同業者に最大限に公開して、購入検討のお客様へのご案内を促進することが最も重要になります。
インターネットが日常的に使われる時代とは言え、全国にある不動産会社はコンビニの数より多く、各社がそれぞれお客様との接点を持っています。
従って、売却を承った会社が自分だけで頑張って買主様を探しても売主様にはメリットがなく、同業他社からのお客様紹介を受ける方が、余程早く効率的に成約につながることに、異論はないでしょう。
ところが・・
このような同業他社からの買主様の紹介を、できるだけ避けてしまう不動産会社は、今日でも後を絶ちません。
他社への物件紹介を拒む行為は、売買を阻害する要因になってしまいますが、なぜそのようなことをするのでしょうか?
◆◆売却物件の情報を出さない目的◆◆
実は、不動産会社が売却の仲介を承ると、法律によって、その物件情報を業界共通のデータベースに登録しなければならない義務を負っています。
(仲介の依頼方法には3種類あり、そのうちの「一般媒介」では登録義務が課されていません。)
従って、ほとんどの売却物件はこのデータベースに最低限の登録がされますが、実務上の問題は法律の定めの先にあると言えます。
例えば、買主の紹介を打診すると「別に検討中の顧客がいる」と嘘を言ったり、物件の詳しい情報を聞いても教えてくれなかったりというのはよくある話。
内見を希望しても、あれこれ理由をつけて応じてくれないこともあります。
更に、売主様への営業報告でも架空の検討客が「検討中」などとして時間稼ぎをするのですから、ちょっと悪質です。
このように、売却物件の情報や案内を極力出さない行為を、物件の囲い込みなどと言います。
情報を囲う理由は明らかで、自社で買主様を確保することによって、売主様と買主様がそれぞれ支払う仲介手数料を、自ら独占することを狙っているからです。
◆◆「両手仲介」が禁止されていないという根本的な問題◆◆
仲介で売買が成立すると、不動産会社は売主様と買主様の双方から、仲介手数料を頂戴します。
仮に3,000万円の物件の売買なら、通常の仲介料は96万円(税別)となりますが、売却を承った会社が買主様も見つけることができれば、売上となる仲介料は2倍の192万円になります。
この収入が2倍になる構造は、不動産会社にとっては、魅力的と言わざるを得ません。
売主様と買主様を1社で確保して双方から仲介料をいただくことを、両手仲介と言い、ノルマや予算が厳しい会社ほど、傾倒してしまいやすくなります。
両手仲介を狙って物件を囲い込んで情報を出さないと、高く早く売却する責務を果たすことが二の次になってしまうのですが、日本では法律で両手仲介自体は禁止されていません。
一方、アメリカなどの諸外国では、両手仲介は消費者であるお客様のデメリットになるという考え方から、法律で規制されています。
◆◆大手が率先して「囲い込み」◆◆
ところで、マイナスのイメージが強い業界であるために、ご自宅などの不動産を売却する際には、知名度の高い大手なら安心と思って依頼先に選ぶ方が多いようです。
確かに、有名大手には法令順守の経営姿勢や自社の営業力などに良いイメージがあります。
ただ、ここでご説明している物件の囲い込みに関しては、むしろこうした大手の不動産会社が率先して行っているのが実態です。
時々雑誌などで暴露されて、会社の利益を優先している問題が表面化しますが、今日でも本質的な営業の姿勢は変わっていないようです。
自社に購入を検討中のリアルなお客様がいて、売主様の希望価格で早期に売買できるなら結構なことですが、時間が掛かったうえに売値を下げてでも自社で買主様を確保することに拘るのは、売主様への明らかな背信行為でしょう。
業界全体の「あるべき姿」の実現は、まだまだ前途多難かもしれません。
◆◆囲い込みをしない不動産会社を見極めるには◆◆
信頼できそうな有名大手が物件の囲い込みを普通にしているとなると、イメージ以外にどのような基準で売却の依頼先を検討すればいいのでしょうか?
囲い込みをしているか否か、的確に判断するのは難しいかもしれませんが、スタッフが売上だけで評価されノルマも厳しそうな会社では、囲い込みをしたくなる温床があると見るべきでしょう。
売却のご依頼をいただくために必死でしつこく営業してくる会社や営業マンも、同様の理由で要注意です。
個別の会社の是非を判断する前に、不動産仲介業の問題点や仕組みを理解しておくことも役に立ちますので、参考になさってください。