マンションの価格が爆上がしている実態とは?
2022.01.29
2022年1月に発表された調査結果によると、横浜市を含む1都3県で2021年に新規に分譲されたマンション「平均価格」は、バブル経済の真っ只中だった1990年を上回って、6,260万円という史上最高額を更新したそうです。
地価が突出して高い東京23区の販売戸数が多かったという要因もあったようですが、この価格の水準は、かなり衝撃的です。
新築マンションの値段が上がると、その影響は中古マンションにも波及し、取引価格が大幅に上昇している物件も多数見られます。
コロナ禍の影響で庶民には「好景気」という感覚はあまり持てず、むしろ困窮している方が多発している状況において、なぜマンション価格はこのような動きになっているのでしょうか?
◆◆マンション価格上昇の要因◆◆
新築マンションの価格急騰の要因は、いくつか指摘できます。
①建築工事金の上昇
全世界的な資源価格の高騰で、建物の建築に使われるあらゆる資材の値段が上がっていると同時に、人手不足で人件費コストもアップ。
原油や木材のニュースがホットですが、海外では日本とは比較にならないほど、諸物価が上がっているようです。
②住宅需要の急拡大
コロナ禍で在宅時間が増えて、リモートワークも普及しており、住宅購入を検討する人が明らかに増えている。
ただ、供給は新築・中古を問わず、すぐに大きく増やすことはできないので、需給のバランスが崩れている。
③金余り現象の影響
世界中の各国がコロナ不況の対策として膨大な量のお金を供給しており、一部が運用目的で、日本の不動産市場にも流入。
コロナ禍で商業施設が不振になっていることもあり、投資の対象が需要が安定的な住宅(賃貸目的)にシフトしている。
特に3つ目の要因は、現実の景況感とは乖離が生じてしまい、実需への影響も大きいポイントです。
株価の動きでも指摘されていますが、個人所得もどんどん上がっていたバブル期と較べると、歪んだ状況とも言われています。
いくら住宅ローンが超低金利でも、6,000万円を大きく上回る新築マンションの購入が可能な個人(世帯)は限定されるでしょう。
ただ、だからと言って、高すぎて売れない(開発業者の在庫が増えている)状況にはなっていないのが実情です。
高くても売れていることが、開発業者の強気な営業につながっているように見えます。
◆◆中古マンションの価格への影響◆◆
論理的には、マンションの建物部分は、経年に伴う劣化で資産価値が目減りしていくので、価格も徐々に下落します。
ただ、不動産相場全体の動向や、上述のような新築マンションの価格に影響されて、当初分譲時の価格を大きく超える水準で売買されることは、珍しくありません。
約20年前に分譲されたマンションを対象にして、直近の中古市場で売買された価格を調査したデータによると、横浜市内では、西区(みなとみらいエリアが中心)、神奈川区、中区あたりで、実に30%前後の「価格上昇」が見られます。
また、港北区や都筑区など、東京都に近い北部エリアでも、20年前よりかなり高い売買価格が付いています。
この20年の間には、リーマンショックや東日本震災などで、不動産相場が急落した時期もあったことを踏まえると、特にここ数年の高騰が顕著と言えるでしょう。
ご自宅不動産の売却予定がない方にとっては、あまり気になる話題ではないかもしれませんが、何かの機会で価格査定を取ってみたら、驚いてしまうかもしれないですね。
◆◆住宅需要の現状◆◆
コロナ禍がもたらした象徴的な流れの1つに、東京への一極集中から脱東京=分散化・地方移住という変化があります。
話題性があるので、東京から遠く離れた地方や過疎地へ移住した方の紹介や、大企業の本社の移転がしばしばニュースになりますが、現実的には時々の通勤や通学も比較的容易な範囲内、例えば神奈川県だと湘南エリアなどへ移る方が多いようです。
横浜市内でも、人口密度が低くまだまだ自然が豊かな郊外立地の住宅の良さが、再評価されたりしています。
ただ、だからと言って都心に建つマンションが不人気になったのかと言えば、まったくそのような様子は見られません。
都心には、他には代えがたい高度な利便性やエンターテイメント性があり、コロナ問題に関わらず、居住の需要は常に旺盛です。
逆に、郊外のエリアでは、駅まで徒歩圏の立地や近所に利便施設がいくつもあるようなマンション、よく整備された住宅街は人気ですが、いくら自然環境が良いと言っても、日常生活や通勤通学に苦労するような物件までが、軒並み値上がっている訳ではありません。
価格が高くなってもすぐに売れる住宅と、価格は上がっていないのに売れにくい住宅の二極化は、現在の不動産市況においても相変わらずシビアと言えそうです。
◆◆今後の市況の予測◆◆
今から数年前には、不動産市況は東京オリンピックの頃まで上昇した後、特需の下支えがなくなり下落するだろう、と言われていました。
ところが、コロナ問題で社会状況が大きく変わってしまったとはいえ、オリンピックが終わった今日に至っても、住宅価格がすぐに下落に転じそうな兆候は感じられません。
では、今後はどうでしょうか?
もちろん、未来のことは分かりませんが、バブル期のように高くなった分だけ暴落する可能性は低い、というのが多数意見です。
その理由はいくつかありますが、新築住宅が供給されている場所や数量は実は限定的で、空き地さえあればどこでも家を建てて大量に供給するような愚行を、開発事業者が避けていることが挙げられます。
また、建築資材の価格上昇は、日本の国内事情(景況感など)によってコントロールすることが難しい問題です。
中古マンションの市況については、物件毎の特性によって、需要の強弱が分かれる可能性が高いですが、全般としては、比較的堅調に推移
するのではないかと、予想されています。