マンション売却の「仲介手数料0円」システムの裏側

2022.02.18

「不動産を売却する時の仲介手数料がなんと0円に!」
「え?まだ仲介手数料払ってるの?」
などと、仲介での売却において、不動産会社に支払う仲介料を節約できると訴えてくる宣伝広告を、時々見かけます。
売主様からすれば、売却で要する一番大きなコストが仲介料になることが多いので、検討してみようかという気持ちにもなると思います。
もちろん、利用しても本当に大丈夫なら、という前提ですが。

不動産仲介を主要な事業としている会社にとって、売買等が成立した時にお客さまから頂戴する仲介料は、重要な収入源です。
逆に言えば、本当に仲介料をまったく取らないなら、まともな営業ができませんし、会社の存続さえ難しいでしょう。
では、売却時の仲介料を不要としている会社は、どんなカラクリで成立しているのでしょうか?
当社ではこのような「サービス」は提供していませんが、リスクも理解したうえで、許容できる思われるなら、利用する選択も考えられると思います。
関心がある方は、ご一読のうえで判断してみてください。

◆◆売主からは貰わないが買主から確実に貰う方法◆◆

売主様の仲介料ご負担をゼロにする1つ目の方法は、売主様からは貰わないかわりに、買主様からは仲介料を確実にしっかり貰う、というやり方です。
売買の仲介をする場合、不動差会社は売主と買主の双方から、法律で決められた範囲内の仲介料を頂戴することができます。
従って、買主様が支払う仲介料を確実に収受できれば良しとすることで、売主様側の負担を敢えてなくすことが可能です。

一見するとこの方法は、買主様には心苦しいけれど、売主様にとっては嬉しい限りのように感じられますが、実は危険なデメリットがあります。
それは、売却を承った不動産会社が「絶対に自社で買主を確保する必要がある」という命題を背負ってしまうことで生じる問題です。

不動産の売買仲介の基本は、日本中に数多くある不動産会社の各社が持っている購入検討客や営業力をできるだけ活用して、幅広く売買のマッチングを図ることにあります。
1社での営業力には大手の会社でも限度がありますが、業界全体でお客様を紹介しあえれば巨大なパワーになることは、論を待ちません。
従って、売却をご依頼いただいた不動産会社では、物件の情報を公開して、同業他社に買主の紹介をお願するのが大原則。
実際に多くの売買の現場では、売主側の仲介の不動産会社と、買主側の仲介の不動産会社は、別の会社になります。

ところが売主様の仲介料をゼロにする不動産会社では、このような他社との「協業」は絶対にできません。
自社で買主様を確保することが最優先の営業目標ですから、もし他社から購入検討客を紹介されたら大迷惑。
受け入れる余地がないので、売却物件の情報は公開しません。
それでも、自社に強力な営業力があって、適正な市場価格で買主を確保できれば結果オーライですが、自社で成約しやすいように、売出し価格を低めに誘導したり、売主様に契約条件を譲っていただくよう迫ることが懸念されます。
仲介料が無料になる一方で、高く早く売るという、本来の目的の実現は厳しくなる可能性があるので、メリットとデメリットを天秤に掛けて判断する必要があります。

例えば、売り出されることがまれで、購入希望者が列を作って待っているような人気物件のご売却なら、すぐに売れる可能性が高いので、この方法を使っても良いのではないかと思います。

◆◆仲介ではなく実は不動産買取りだった◆◆

もう1つ別の方法は、ネット検索の結果に出てくる見出しには「仲介手数料無料!」と記載しておいて、ページを開いてみると、実は仲介での売却ではなく、不動産の買取りに誘導しているものです。

不動産の売却手法には、主に「仲介」と「買取り」があります。
それぞれの手法についての詳細は、ここでは全部に触れませんが、買取りの場合は、特定の買取業者に直接売却することになるので、そもそも理屈的に、仲介という考え方がありません。
ですから、仲介料無料は当たり前の話で、さもお得というイメージを強調するのは、ちょっと問題があります。

買取りにももちろん利点があって、条件を合意できれば短期間で売却・換金ができますし、引渡し後に欠陥や不具合が見つかっても、売主様が責任を追及されることはありません。
ただ、買取りには決定的なデメリットがあり、仲介に較べて売却価格が大幅に低く、通常は相場水準の7~8割程度になってしまうと、認識しておいてください。
その理由は、不動産を買い取った会社は、基本的には転売することで利益を得ているため、市価より安く買わないと、差益が得られないからです。

一例として、相場価格がもし4,000万円のマンションなら、買取価格はだいたい3,000万円前後。
仲介料(売買価格が4,000万円なら約140万円)が不要になったとしても、経済的にどちらが有利かは、申し上げるまでもないでしょう。

買取りという売却手法を否定している訳でないので、誤解しないでいただきたいのですが、「仲介料無料」という宣伝文句によって、売主様(消費者)を買取りに誘導するやり方は、騙しているに等しく、ずるいですね。
売主様自身が買取りと仲介をしっかり比較して、その違いを理解したうえで自発的に選択されるなら結構ですが、騙された!ということにならないよう、十分ご注意ください。

◆◆オークションや直接取引による売却◆◆

所有しているモノを売却したい時、昨今ではYahooやメルカリ等に代表されるように、個人でも会ったことがない他人様と、インターネットを介して気軽に直接取引ができる時代になりました。
不動産についても同様に、オークションなど、不動差会社を使わずに購入検討者と直接出会えるサイトが運営されています。

実は、マンションなどの不動産を売買する際に、不動産会社を介さなければならないという法令は、一切ありません。
不動差会社に依頼すれば売主様も買主様も、少なからず費用が必要になるので、お互いに了解するなら、直接取引は当然ありです。
ただし、不動産は、軽微な身の回り品と異なり、所有権の登記や細かい税制、マンションなら管理組合への加入、土地なら建物の新築や利用の制限など、法律や社会の制度と切り離すことができません。
対象となる不動産のことをよく調べずに、極端に言えば契約書も作らずに話を進めると、後でトラブルになったら本当に大変です。
仲介料を削減したメリットなど吹っ飛ぶどころか、半永久的に解決できない悩みの種になってしまうかもしれません。

もしマンション等の不動産売買で直接取引をしたいなら、売主と買主がお互いに不動産に精通していること(片方だけが詳しい状態は不公平)と、トラブルが発生する可能性や登記することを踏まえて、しっかりした売買契約書を作って締結することが必要です。

このように、マンション等の不動産売却で仲介料をゼロにする方法はいくつかありますが、いずれの場合でもそれに伴うデメリットやリスクがあることは、忘れてはいけません。
目先の費用を削減することについ魅惑されて、本来の目的である「高く早く確実に売却すること」が二の次になるとしたら本末転倒。
対象物件の特性や、売主様の不動産売買に関する経験・知識の状況などをよく踏まえて、判断なさってください。

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